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女神と下僕の道中記!-女優とヘタレのTS日記- Over the Distortion Episode:00-小サナ叛逆者-
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2008.12.28 (Sun)

Over the Distortion Episode:00-小サナ叛逆者-

カバリア島訪問記録その2。槇世(狸)編。いやねこもいるけど。
小説調でお送りします。

その1・エリー(猫)編はこちら。

Over the Distortion
Episode:00-小サナ叛逆者-

【More・・・】

 ビルの窓から漏れる光が、星空に代わり都会を照らす。
 駅前は週末ともなれば、居酒屋の呼び込みで賑やかだ。

 スーツの上に蛍光オレンジのジャンパーを羽織った俺は、
 仕事帰りの疲れた面々に、広告つきのポケットティッシュを配っていた。
 色つきの伊達眼鏡をつけているため、人々の顔は五割増で疲れて映る。
 なんとはなしに時計に目を遣ると、時刻は午後十時を回ろうとしていた。
「さて、じゃあもうひと仕事――」
 潰れたダンボールを覗けば、残りはあと僅か。
 ――これならば秒針が12の文字に重なる前に、何とか片付きそうだ。

 気合を入れ、顔を上げた俺は、

 そこで、硬直した。

 幽霊だの妖怪だのを見ても、恐らくここまで驚かないだろう。
 視界を掠めたのは、見覚えのある亜麻色の髪だった。
 遭遇してはいけない人物。
 それは、重々理解していたはずなのに。
「――エリューゼ?」
 俺は、気がつくより前に声を飛ばしていた。

 相手は、大きな瞳をさらに大きく見開き、こちらを見ていた。
 ――しまった、と。心が呟くものの、もう遅い。
 それに。
 何故だか、呼び止めなくてはならないような気がしたのだ。
「……あ、」
 言葉を捜すよう、彼女は視線を落とす。
「何してるんだ?そんな格好で」
 と、いうのも。
 フォーマルなドレスを纏って、繁華街のど真ん中にいる彼女は異様なまでに目立つ。
 しかし、
「何って……まっきーこそ何してんのよ」
 じと目でこちらを睨み返し、彼女は口元を引きつらせた。
 『まっきー』というのは、槇世――俺の、生徒たちが勝手につけた渾名である。
「…………」
 えーっと。うん。まあ。
 俺は誤魔化すような笑みを浮かべ、あはは、と頭を掻く。
「あははじゃないわよ……。公務員はバイト禁止じゃないの?」
 ――そう。
 派手な蛍光色のスタッフジャンパーを着て配り物などしていたが。
 俺は、れっきとした教師である。
 そして目の前で呆れ顔をしている少女は、その教え子だった。
「まあ、うん、それは。
 それより、こんな時間まで女の子が一人歩きしてるのは感心しないぞ」
 遅くならないうちに帰ったらどうだ――と。
 途中まで言いかけて、俺は言葉を噤んだ。

 ぱたり。

 少女の白磁の頬を、水晶色のしずくが伝い、落ちる。
「お……おい?エリューゼ??」
「――ない」
 常にないほど消え入りそうな声が、途切れ途切れに届く。
「へ?」
「――帰らないっ!」
 ……その言葉で、アバウトに事情を理解した。
「……家出、か」
 肩を落とす俺。彼女は極まり悪そうに顔を逸らした。

 取り敢えず。
 教師としても人間としても、このまま放っておくわけにもいかず。
「……あー、あと五分もあれば終わるから、店にでも入って待っててくれ」
 そう告げて、残りの仕事を急ぎ片付けた。



「――で、見合い相手を殴って逃げてきたと?」
「うん」
 こくん。
「……っはー……」
 盛大に溜息が漏れる。
 じろ、と睨み返してくる瞳に、いつもの覇気はなかった。
 ここは、俺のアパート。
 彼女はそれこそ借りてきた猫さながら、ちょこんと部屋の隅で座っていた。
 ――念のため言っておくが、教え子を連れ込んでどうこうしようという意図はない。マジで。
「悪いな。文字通り何もないんだが」
「すごーい。こんな狭い場所で人が暮らせるのね!」
「……悪かったな」
 四畳半一間のアパートは、お嬢様育ちの彼女には新鮮だったらしい。

 と、いうのも。
 教師といっても教育実習中の俺に、まともに生活できる経済力はない。
 公務員はアルバイトができないので、周囲の同期も実家からの仕送りを受けている。
 両親そして六人の姉、全員が教師という俺の実家は、そこそこ裕福ではあるのだが――
 ある理由から、俺は一切の援助を受けていなかった。

 エリューゼはふるふると首を横に振り、こう続ける。
「悪いなんて誰も言ってないじゃない」
「そうか?暖房もテレビもないし、狭いし、窮屈だろ」
「狭いけど……でも、まっきーはここで、自分で生活してるんでしょ?
 あたしはどっちかというと、羨ましい」
 意外な言葉に、思わずきょとんとする。
 しかし――
 ここへ来る前の自分を思い起こせば、確かに同じことを言ったに違いない。
「あたしはまだ、自分ひとりで生きていく力はないから。
 そりゃ多少はモデルの仕事もしたけど、生活するだけの稼ぎはないわ。
 今お財布に入っているお金は――あたしじゃなくてお父様のだもん」
 幾つかのミスコンで優勝を浚い、モデルの仕事で学校を時々休んでいた彼女。
「楽しいからモデルをしてたのかと思っていたが――」
 どうやら、少し違うようだ。

「そりゃモデルの仕事は好きだけどさ。
 ――お父様の娘じゃなくて……『あたし』のモノが、欲しかったのよ」
 何不自由ない暮らし。
 でも、そのどれひとつをとっても、自分のものではなく。
 何でも持っているのか、何も持っていないのか。
 飼い猫のように、そこで納まっているだけの器ではなくて。

 ――困った。
 彼女の家へ連絡するつもりもあったが、こんな話を聞かされると。
 その意思が、鈍る。
「ねえ、まっきー。
 ここに匿ってくれない?衣食は自分で何とかなるから」
「ここにったってなあ、お前――」

 ……ん?

 ここって、ここだよな。
 …… …… ……。
「できるかぁぁぁぁ!!!!!」
 がっしゃーん。
 ちゃぶ台があればひっくり返しているだろう。実際転がったのは折り畳み式の棚だが。
「けちー」
「けちじゃないけちじゃ!あのなあ、嫁入り前の娘が……」
「なにじじむさいこと言ってんのよ。
 じゃあ訊くけど――あたしに何かするわけ?」
「するかッッッ!!!」
 真っ赤になって声をあげ、ふと時間が夜だと思い出してはっとする。
「でっしょー?
 あたしだって、あんたにそんな甲斐性があるとは思ってないわよー」
 ……馬鹿にされている気がする。が、否定できない。
 鈴を転がすような声でからから笑っていたエリューゼは、ふと何か思い出したように、
「それに――」
 ぱかっ。
 携帯電話の画面を開くと、

 そこには、あの蛍光色のジャンパーを着た俺の仕事姿が映っていた。

 状況を理解するのに、やや時間を要した。
 さあ、と、血の気がひくのがわかる。
「…………ちょ、まて、おま」
「これ、写メしても、いーい?」
 満面の笑み。
 それこそ男のひとりやふたりは簡単に騙せそうなくらい、極上の。
 口をぱくぱくさせる俺に、彼女はとどめとばかり、ひとこと、こうのたまった。
「これが学校にバレるくらいなら。
 宿貸すくらい、わけないわよねー?」

 そもそも選択権自体が存在しなかった、という。


 しんそこ頭を抱えながら、俺は、わかった――と重く呟く。
「……そんかわし」
 顔を上げる。
「俺は今からネカフェ難民もどきになる。何もない部屋だけどテキトーに使え」
 ちゃらん。
 白い犬のキーホルダーがついた鍵を、彼女の足元に投げた。
「何もなくたって、誰かに見つかったら問題になるだろ?
 それに――俺だって、間違いが絶対にないって保証はないんだぜ」
  きょうしだって にんげんだもの  まきせ
 エリューゼは困ったような顔をする。
「……。待って」
 彼女はバッグから何かを取り出し、すっと差し出してきた。
「どうせそんなお金ないでしょ?
 ――これ。その鍵と交換よ」
 キャッシュカード、のようだ。
 彼女は何やら数字らしきものをメモすると、俺のポケットに強引に押し込む。
「……。すまん」
 突っ返したいが、強がりを言えるほど懐に余裕はない。
「これで、交渉成立ね」
「将来が楽しみだな……ちぇ、」
 渋い顔でがくりと一度、肩を落とし。
 俺はそのまま、来た道を辿るのだった。



 ――父親、か。
 今の俺は、彼女に大人として講釈を述べるだけの立場にない。
 反抗期延長戦、のような。
 つまるところ俺も、彼女と何も変わらない家出息子なのだから。

 親父は――いつも正しくて、いつも威張っていて。
 子供だった俺の価値観や考えなんて、否定するだけのものを全部持っていた。

「槇ったら、またお父様に逆らったの?」
「男の子って意地っ張りねぇ。頷いておけば機嫌がいいのに……」

 姉たちのように、要領は良くなかった。
 納得できないことに頷けるようには、俺はできていなかった。

 ――「大人の言うことを素直に聞いていればいいんだ」
 ――「お前は、何もわかっていない子供なのだから」

 ――ガキにだって。
 ――ガキなりに、考えも、意思も、自負も、あるんだ、と。

 それを、証明してやる。
 いつか絶対に、親父の鼻をあかしてやる。

 そう思った俺の手は、
 進路希望の書類に、『教育学部』と綴っていた。

 ――「漸くわかったか。この不良息子が」

 ――ああ、わかったよ。アンタの言いたいこととは違うだろうけどな。

 俺が悟ったのは、喚いているだけでは遠吠えにしかすぎないということ。
 同じ、教壇という舞台の上に立って、その上で。
 親父が不良と切り捨てたガキどもの力を、見せてやりたくて。

 そうして俺は、教壇に立っていた。



 難民もどき生活を始めて、何日か経過したときのこと。
 がらりと戸を開けると、教室が騒然としていた。
 否。寧ろ、静かなの……か?
 女子高にあるまじき奇妙な静けさに、俺は首を傾げる。
「おはよー……ん?
 ローズマリーはどうした?エリューゼは……仕事かな」
 明らかに、教室の人数が少ない気がする。
「そ、それが……」
 おず、と。
 物静かな少女がひとり、新聞を差し出す。
「これは……ああ、この間浮上したっていう島の記事か――」
 新聞などという高価なものは購読していない。

「ええと、なになに。
 メガロカンパニー、バーチャルゲーム『トリックスター』開始のお知らせ……?」

 メガロカンパニーかぁ、ここのゲームは昔よく友達の家で遊んだなぁ、などと。
 のんびりした思考は、少女の一声で遮られた。

「エリーさんがこのゲームに参加するって言ったらしくて。
 ローズマリーさんが、それを聞いて、その、いつものように……っ」
「……、は?」 
 要するに。
 エリューゼとローズマリー+αが、この島へ向かってしまったということらしい。
「――ッ、に、考えてんだあいつらはぁぁぁぁッッ!!!」
 盛大に頭を抱える。何回目だろう。
 ……心配事の種は尽きるどころか、鼠算式に増えていく。
「すまん、今日のSHRはここまで!」
 俺は職員室へと廊下を駆け抜けた。
  よいこのみんなは 廊下ははしらず あるきましょう  生徒指導部

 ところが。
 職員室ではろくに取り合う者もなく、
 校長室へ飛び込んだものの、欠伸をかみ殺すような生返事。
「だあああどいつもこいつも!
 生徒に何かあったらどうする気なんだよ!?」
 カルシウムが不足しているかもしれない。いやそういう問題じゃなくて。

 ――かくして。
 俺は少女たちを追い、カバリア島行きの船へ乗り込んだのであった。
 島への路銀は、エリューゼから受け取ったキャッシュカードから支払うことができた。
 というか。
 彼女がアパートの鍵を持ち出してしまったままで。
 ……このままでは、俺は、家へ帰れない。

「ったく……女ってのはたくましいよな、っと」
 苦虫を噛み潰し、俺は船に揺られたのだった――。


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テーマ : トリックスター0(ラブ) ジャンル : オンラインゲーム

01:49  |  借★金★王 槇世  |  TB(0)  |  CM(1)  |  EDIT  |  Top↑

*Comment

とりあえず、すぐにもどるつもりの槙瀬氏が、公務員の座を捨てて
夢と冒険の世界に移住する所までもうちょっとよみたーーーいい

(印刷してよんでます^^)
PC8001 |  2008.12.30(火) 08:23 |  URL |  【コメント編集】

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